イヌとネコのリンパ腫の分類と治療~前編~

分類の話の前に、

 まず悪性リンパ腫って何かな?を難しめな感じで説明すると、

 骨髄以外の様々なリンパ系器官でリンパ球が腫瘍性増殖する病気をひっくるめて=悪性リンパ腫になります。
 ~厳密には良性リンパ腫というのはないのでリンパ腫=悪性リンパ腫になります~

要するに、

 リンパ腫という病名は、いろいろなタイプのリンパ腫をひっくるめた総称になっています。

 その中には治療反応も予後も挙動も違ういろいろなタイプのリンパ腫が存在します。

例えるなら、

 アーマーガアとかヒバニーとかカイリューとかいっぱいいるのをまとめてポケモンと呼んでいるみたいな感じです。

 モンスターボールに入ったり出たりできて時にはデータとしても扱えて転送とかできちゃう仲間たちをひっくるめて=ポケモンと呼ぶのであって、

 ポケモンと呼ばれる不思議な仲間たちはみんなタイプも属性も性格もバラバラです。

 リンパ腫もポケモンも総称と考えたらわかりやすいかもしれません。

 このように、リンパ腫は総称であって、実際にはいろいろなタイプが存在するのですが、

 そのタイプをわかりやすく整理整頓するために様々な分類法があります。

分類の例を挙げると、

 解剖学的分類

 悪性度による分類

 細胞形態による分類

 病理組織学的分類(WHO分類)

などが存在します。

分類方法が複数あるので、

 1頭のワンちゃんのリンパ腫に対してその診断名が複数でてきたりします。

例えば、

 犬のリンパ腫で一番多い全身の体表リンパ節が腫瘍性に急速腫大するリンパ腫は分類方法によって、

 =多中心型リンパ腫

 =びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、=高悪性度リンパ腫、=低分化型リンパ腫、=B-cellハイグレードのリンパ腫

などなどの診断名が存在します。

 同じリンパ腫でも分類法によっていろいろな診断名があるためにオーナー様にはわかりづらいと思います。

分類方法をいれてもうすこしわかりやすく説明すると、

 犬のリンパ腫で一番多い全身の体表リンパ節が腫瘍性に急速腫大するリンパ腫は、

 解剖学的分類でいうと多中心型リンパ腫

 悪性度や細胞形態による分類でいうと高悪性度リンパ腫、低分化型リンパ腫、B-cellハイグレードのリンパ腫

 病理組織学的分類(WHO分類)でいうとびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫

となります。

リンパ腫にはいろいろな分類方法がありますが、

 とりあえず病変の存在する解剖学的部位で分類した後にもう一つプラスαして悪性度がわかるような分類をいれる!

 みたいに最近はしていることが多いです。

例えば、

 解剖学的分類では

 多中心型リンパ腫と診断。

 その中でも病理組織学的分類(WHO分類)でいうとびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断
 ~病理組織学的分類は細胞診から推測することも多いが…~

こんな感じになっています。

 解剖学的分類に加えて病理組織学的分類(WHO分類)などをプラスαすることで、

 進行が速いけれども、化学療法に比較的よく反応するリンパ腫であることが予想できるので、特徴に沿った治療が可能となります。

 ここまでの内容で、リンパ腫にはいろいろな分類方法があって複雑だな!と感じられたと思うのですが、

では、なぜこんなにもややこしく分類しているかというと

 それは治療や予後の予測につながるからです。
 ~つなげたいからというのもあります~

 今やリンパ腫はひとくくりにまとめて治療方法が全部だいたい一緒という疾患ではなくなりかけています。

 様々な分類でタイプをわけて、それぞれのリンパ腫の挙動や予後を予測し、それにあった治療を実施する!

 こんな腫瘍になってきています。

分類やタイプ分けなしにリンパ腫を治療するということは、

 極端に言うと、地面タイプのポケモンにでんきタイプの技でひたすら攻撃しているということになりかねません。

分類やタイプを考えてリンパ腫を治療するということは、

 地面タイプのポケモンにはやっぱ、みずorくさorこおりタイプの技中心で戦おう。どくタイプの技はちょっとなぁ…どく系はやめときたい。

みたいに考えることに等しいと思います。

病理組織学的検査(WHO分類)は必須なのか?

 リンパ腫の病理組織学的分類(WHO分類)の重要性は近年増しています。

だからといって、診断のために

 体表リンパ節切除からの病理組織検査

がいつでも必須なのかというと今の所状況に応じて必要なのかな?と私は思っています。

 特に多中心型リンパ腫の場合は細胞診のみで診断するケースが多々あって、病理組織検査が現状必須だとは思っていません。

 細胞診だけで新Kiel分類も加味してびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(以下DLBCLと略)だろうと推定して診断することもあります。
 ~病理組織検査で診断することがベストなのだが…~
  ~もちろん、身体検査所見、その他のいろいろな検査所見も考慮しての診断です~

この細胞診に加えて、

 当院では去年から、補助的にリンパ球クローナリティ検査を細胞診のプラスαとしてオーナー様に提案することがあります。

リンパ球クローナリティ検査とは、

 ・リンパ球が腫瘍性に増殖しているのか?→リンパ球のクローン性の確認

 ・B細胞性なのか?T細胞性なのか?→免疫表現型をはっきりさせる

 このような目的の診断補助的検査になります。

 細胞診+リンパ球クローナリティ検査によって診断精度を向上できるという印象です。

リンパ球クローナリティ検査

↑リンパ球クローナリティ検査の結果はこんな感じででるのですが、オーナー様には解釈が難しいと思います。PCRのバンド解釈がどうこうよりBリンパ球に単一の腫瘍性増殖があったという事実が大切だと思うので、そのへんをオーナー様にわかりやすく説明したいと思います。あくまでこの検査は形態学的診断の補助にすぎません。

ちなみに、

 クローナリティ検査のみでのリンパ腫の診断はなるべく避けたほうがいい!

 と思います。

なぜならば、

 形態学的診断がついたものに対して補助的におこなう検査がリンパ球クローナリティ検査の位置づけだからです。

あと、ここからは補足ですが

 各種リンパ節の細胞診で小型のリンパ球主体という診断であれば、そのリンパ節を切除からの病理組織検査を強めにおすすめしています。

 この場合、細胞診だけでは反応性にリンパ節が腫大しているのか?腫瘍性に腫大しているのか?判断がつかないからです。

 犬の皮膚リンパ腫についても皮膚生検からの病理組織検査をなるべくおすすめしています。


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猫の情報
2023年03月17日